<いじめ すくえぬ声>「解決済み」悲劇招く

<いじめ すくえぬ声>「解決済み」悲劇招く
河北新報 2016年9月29日(木)11時5分配信

 13年9月28日施行のいじめ防止対策推進法は「施行後3年をめどに必要な措置が講ぜられる」と定め、国は同法の見直し作業に入った。いじめを苦に命を絶つ児童生徒が絶えない中、法は何を変え、何が足りないのか。東北地方の事例から、見直しの視座を考える。(報道部・相沢みづき)

◎防止法施行3年・東北(上)定義と認知

 「本当に13年間ありがとうございました…さようなら」

 JR奥羽線北常盤駅構内の線路で8月25日、列車にひかれて死亡した青森市浪岡中2年の女子生徒(13)のスマートフォンに、いじめを苦に自らの命を絶つとするメモが残っていた。

 市教委は女子生徒側が昨年6月から他の生徒による悪口などを学校に相談していたことを明かし、いじめの存在が濃厚と判断した。今年6月にも同様の相談があったが、女子生徒は教諭に「大丈夫」と答えた。

<「信じない」>

 学校は相談があるたびに対応したが、いじめとは認知せず、市教委にも報告しなかった。

 「『いじめは解決した』というサインを信じない」。市教委の成田一二三教育長は9月1日の記者会見で学校現場と自らに言い聞かせるように話し、悲劇を防げなかった無念さをにじませた。

 青森県内では8月、東北町の中学1年の男子生徒(12)も「いじめがなければもっと生きていたのに」との書き置きを残し、自宅脇の小屋で自殺した。母親は6月、「授業中に椅子を蹴られているようだ」などと相談。学校は当初いじめと判断したが、関係生徒に聞き取りするなどして「収束した」と結論付けた。

<兆候を把握>

 二つの事案は、どちらも学校がいじめの兆候を把握していた。東北地方で近年相次ぐ重大ないじめ事案の多くでも共通する。

 天童市の中1女子(2014年1月)、仙台市泉区の中1男子(同年9月)、岩手県矢巾町の中2男子(15年7月)の事案では、それぞれ学校が問題の行為をいじめと認識しなかったり、いじめを認識しながら「解決済み」と判断したりした末に自殺を招いた。

 背景には、何をいじめと捉えるかという「いじめの定義」に対する教員の理解の差や、学校現場の困惑が横たわる。

[いじめ防止対策推進法]大津市で2011年に起きたいじめによる中2男子の自殺をきっかけに制定され、13年9月28日に施行された。いじめ防止に向けた基本方針の策定義務を国と学校に課し、自治体にも努力を求めた。深刻ないじめ被害が疑われる「重大事態」では学校や教育委員会による調査と被害者側への情報提供を義務付け、必要に応じて首長による再調査を可能とした。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする